この記事は診断士の勉強を始めたものの、財務・会計の科目に対して今ひとつペースが掴めずに足踏みしている人に向けて、この科目を勉強する意味合いや、習得のコツなどについて解説しています。
この記事を読むことで、財務・会計を学ぶ意味合いや、効率よく攻略するためのコツなどを掴む手がかり・きっかけを得ることが出来ます。
中小企業診断士の試験科目は、中小企業の経営者の相談に乗ることの出来るような存在になるための超基本の知識を習得するためにいろいろな分野の知識がある程度バランスよく問われています。
筆者も独立こそしていないものの、実務従事や、独立診断士のお手伝いなどを通じて、多少は中小企業経営者と接点を持つような活動をしていますが、やはり診断士試験科目7科目すべてが同じバランスで役に立っているということはなく、それぞれに役立ち度には差があると感じています。
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しかし、あらゆる場面に顔をだすのが、財務・会計。経理業務の経験や、金融機関にお勤めなど、財務・会計に親和性のある職種・業種の方を除いて、誰もが最も攻略に力を注がなければならない最重要科目であると筆者は思います。(もちろん、得手不得手の個人差はありますけどね。)
今回は、次回と2回に分けて、財務会計を学ぶ意義、筆者なりに取った攻略法をお伝えしたいと思います。
1次も2次もコイツを倒さないと次に進めない!
財務・会計は、1次試験では一日目の2科目め、2次試験では4事例中最後の時間に試験が行われます。筆者の思い出になってしまいますが、2012年の2次筆記試験では、今まで定番の出題項目となっていた経営分析が出題されず、問題用紙を見た瞬間に頭の中が真っ白になったのを覚えています。
しかも、ストレート受験者なので1次試験対策にリソースをかなり投入し、実質100日前後で2次対策を行っていたので、この論述形式に不慣れで、かつ財務事例を解くまでに3事例(人事、マーケ、生産)をこなして体力をかなり消費した状態で臨むことになります。皆が同じコンディションとは言え、かなり気力の勝負になっていると感じました。(2次本試験財務事例の時間は、シャーペンが手汗でツルツル滑って書きにくかったことを覚えています。)
故に、合格を勝ち取るためには、そのような劣悪コンディションでもある程度きっちりと計算問題を解けるようにならなければいけないと思います。そのため、普段から訓練を積み、「財務慣れ」した体質になっている必要があります。
そして、経営法務や経営情報システム、中小企業政策といった暗記中心の科目に比べ、財務会計は理解力・思考力を一番要求される科目です。学習初期から着手し、本試験直前まで、みっちりやり込む必要があるのです。
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でも、身に着けた基礎知識は診断士になってから、財産になる!
損益計算書は企業活動の成績表であり、貸借対照表は企業の健康診断結果であり、キャッシュフローを把握することは、「お金を生む装置」としての企業の強さを把握する強力なツールになります。
この記事をんでいるあなたが、診断士になってお手伝いする企業の現状を把握するためには、まず三期分の財務諸表を取り寄せて、財務内容の分析を始めることになります。
具体的には、売上(大きさと推移)、利益(大きさと推移)、キャッシュフロー、保有資産の状態(特に現金化出来る資産をキチンと持っているかどうか)、負債の大きさ(特に短期で返済期限が到来する負債=流動負債)、自己資本の持ち主がどの様な構成か、在庫回転期間、資金繰り、などなどをスピーディーに把握する能力が求められるのです。能力というか、基本のキです。
診断士としてお仕事をしていくなら、ITやマーケティング、生産現場の改善など、様々な専門分野を持って活動していくことと思いますが、上記財務分析の基礎的な部分は、それら専門性の土台として機能することになると筆者は考えます。全ての企業活動は必ず結果としてお金の出入りになり、それを分析することにより、診断士としての提案の糸口が見つかり、提案実行の結果の評価も最終的にはお金の出入りで判断されるはずだからです。
故に、財務(=数字)に弱い診断士は社長から頼りにされません。
試験勉強で習得した知識は、それだけで企業診断を完結できるほどのレベルにはなりえませんが、そのレベルに至るための基礎知識として必ず機能すると筆者は考えます。
ちょっぴり余談になりますが、財務の知識を持っておくと、株式投資などをする際に、投資対象の企業の強みや、弱みなどの現状把握にも役立ちます。必ずしも投資の成功を約束するものではありませんが、「流動比率が極端に悪い・悪化している」などの投資対象として明らかに不適切な企業を見抜くツールとして、診断士試験勉強を通じて身につけた指標や評価の視点などは、一定レベルで役に立つと思います。
また、企業内診断士として活動する場合でも、財務諸表を読める社員は一定の評価を上乗せされる傾向にあります。財務・会計ってとってもお得な科目なんです。
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攻略のコツは「恐れず取り組むこと」そして「各知識のつながりを意識する」
冒頭でも申し上げましたように、財務・会計は理解に時間を要する、難しい科目です。
言い換えれば、「最初は出来ないのが当たり前」。だから、一定レベルの知識インプットが済んだら、すぐに問題に取り組みましょう。正解できないのは当然と考え、解けなかった問題の解答プロセスの把握に自分のリソース(気力・体力・時間・お金)を傾けましょう。どんどん解いて、計算問題に対する心のハードルをどんどん下げていくしか無いんです。
そして、財務会計の勉強は、企業活動の結果のつながりを意識するのが攻略のコツです。
「企業が頑張って研究開発に投資して(=研究開発費の上昇)、その結果いい商品が生み出されてたくさん売れた(=売上の上昇)、更に売り伸ばすために宣伝をかけて(=広告宣伝費の上昇)、結果として商品がより沢山売り上がったために、売上に占める販売管理費の比率が下がり(=営業利益率の向上)、売上が入金されたために手許現金が増えて(=流動資産の増大)、それを短期負債の返済に充てたので財務内容が改善された(=流動比率の改善)」という具合に、企業活動の一連の流れを「財務」というフィルターを通して把握することを意識することで、学習効率は何倍にも高まります。
※これら評価の善し悪しはケースバイケース。業種やその企業の成長ステージなどによって物差しは異なりますので、一概にいえない部分は確かにあります。が、試験合格と言う観点からは基本的な指標評価が出来れば十分です。
この、「財務・会計フィルターを通して企業活動を把握する」能力は、習得するのに苦労を要するものの、暗記中心の試験勉強に比べると、一度身についたらなかなか忘れないという特性を持っています。それこそ、合格後も忘れないぐらいにね。
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本日のまとめと、次回の解説内容
財務・会計という科目の重要性と学ぶ意義、そして攻略のコツをまとめると、「財務・会計は1次・2次を通じて攻略に時間がかかり、かつ合格するためには避けて通れない重要科目であるが、これを身につけることによって合格後の診断士活動の基礎体力とも言えるスキルを身につける土台になる。攻略するためには恐れず計算問題にたくさん取り組み、また、企業活動のフローを財務的切り口で把握することに努めることが必要である。」といった感じです。
次回「対策編」は、具体的な攻略のために筆者が行った勉強ノウハウ、ハックなどをご紹介したいと思います。
本日はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。