プラモデルを筆塗りで仕上げる際、どの塗料を使うかは完成度を左右する大きなポイントです。
その中でGSIクレオスの「水性ホビーカラー(Aqueous)」は、筆塗りとの相性の良さや安全性から、多くのモデラーに愛されている塗料です。
この記事では、筆者が実際に7体のプラモデルを水性ホビーカラーで筆塗りして仕上げた経験をもとに、そのメリット・ラッカー塗料との違い・取り扱いのコツ・費用感などをまとめて紹介します。水性ホビーカラーに興味はあるけどまだ踏み出せない、という方に向けて、リアルな体験を交えてお届けします。
水性ホビーカラーとは?
水性ホビーカラーは、GSIクレオスが展開する水溶性アクリル塗料で、1980年代から続くロングセラー。2020年代には大幅にリニューアルされ、発色や乾燥性、塗膜の強度などが大きく改善されました。
- においが少なく、室内作業に向いている
- 筆ムラが出にくく、初心者でも扱いやすい
- 重ね塗りや調色もしやすく、応用もきく
これらの理由から、特に「初心者モデラー、リビングモデラーで家族に文句を言われないように模活を始めたい」という人にぴったりな塗料です。
また、水性ホビーカラーにも溶剤成分は少し含まれていますが、マイルドな成分のためプラのクラックに侵食して「パーツ割れ」を起こす心配はラッカーに比べてほとんど無視できるレベルです
筆者は7体のプラモデルを水性ホビーカラーで制作し、関節部分なども塗装していますが今のところ1回もパーツ割れが発生したことは有りません。
付け加えるなら、塗装面の仕上がりはややマット(ツヤ消し)な感じで、例えばキャンディ塗装など塗面のツルツル感を出したい場合は水性ホビーカラーよりラッカーのほうが向いていると思います。
そして、最近は水性ホビーカラーの「ガンダムカラー」や「ボトムズカラー」などの専用色もリリースされ、より選択肢が広がりました。
他にも特色としては「水星の魔女カラー」や「Gundam GQuuuuuuX カラー」などもあります。
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水性ホビーカラーとラッカー塗料の違い(比較表)
項目 | 水性ホビーカラー(Aqueous) | ラッカー系塗料 |
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主成分 | 水溶性アクリル樹脂 | 有機溶剤系アクリル樹脂 |
溶剤 | 水性うすめ液、水道水でも希釈可 | ラッカーうすめ液(強い有機溶剤) |
におい | 少ない(刺激臭ほぼなし) | 強い(換気必須) |
乾燥時間 | 比較的早い(数分〜) | 非常に早い(1〜2分) |
塗膜の強さ | 改良されて比較的強い(昔より向上) | 非常に強い |
筆塗りとの相性 | ◎(伸びが良くムラになりにくい) | △(乾燥が早すぎてムラになりやすい ※筆塗り自体は可能) |
エアブラシとの相性 | ○(希釈が必要・ややコツが要る 基本的には塗料・うすめ液を1:1ぐらい) | ◎(吹き心地よく、仕上がりも安定) |
取り扱いの安全性 | ◎(室内使用可・臭いが少ない) | △(換気必須・火気厳禁) |
上塗り・重ね塗りの耐性 | △(こすると下地が溶けやすい) | ◎(乾燥後は強靭な塗膜に) |
清掃(筆・道具) | 水や水性うすめ液で洗浄可能 | ラッカー用シンナーが必須 |
「アクリジョン」との違いについて
「水性ホビーカラー」と混同されがちなのが、同じくGSIクレオスから出ている「アクリジョン」という塗料。こちらは完全水性タイプで、より環境配慮型ですが、筆塗りにおいては癖が強く、初心者にはやや不向きです。
項目 | 水性ホビーカラー(Aqueous) | アクリジョン |
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発売時期 | 1980年代〜(リニューアル2019年) | 2010年代〜 |
におい | 微臭(控えめ) | 無臭に近い |
筆塗り適性 | ◎(伸びが良くムラが少ない) | △(粘度高めでムラが出やすい) |
乾燥後の塗膜 | 比較的強い | やや弱め(トップコート推奨) |
筆塗りに向いている理由
筆塗りにおける水性ホビーカラーの使いやすさは以下の通り:
- 筆ムラが出にくく、乾燥も早すぎず、初心者に優しい
- 乾燥後の発色がきれいで、重ね塗りやリタッチも容易
(ラッカーほどではないが、隠蔽力も強い。旧来の水性ホビーカラーは隠蔽力が弱すぎたが、リニューアル後の水性ホビーカラーは十分な隠蔽力を持っています。) - においが少ないため、換気がしづらい環境でも作業できる
他にも、ラッカーで塗装した面のスジ彫りに水性ホビーカラーを流し込み、マジックリンで拭き取るとエナメル墨入れ同様に墨入れも出来るという裏ワザもあります。
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水性ホビーカラー × ラッカー塗料の重ね塗りマトリクス
- ラッカー(下地)×水性ホビーカラー(上塗り):問題なし(下地が強固で安定)
- 水性ホビーカラー(下地)×水性ホビーカラー(上塗り):問題なし(ただし、下地塗装後1日ほど置いてしっかり乾かしてから上塗りを推奨)
- 水性ホビーカラー(下地)×ラッカー(上塗り):NG(下地が溶ける可能性あり)
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ラッカー上に水性ホビーカラー:基本的にはOK。ラッカーは溶剤が強く、しっかり乾燥していれば水性の上塗りにビクともしません。
→ ただし、ツヤありラッカー下地の場合は上塗りの水性ホビーカラーを弾くことがあるので注意(つや消しを吹くのがおすすめ) -
水性ホビーカラー上にラッカー塗料:NGまたは要注意。ラッカー溶剤が強すぎて、水性塗膜を侵しやすく、にじみ・溶け・ムラの原因になります。
→ この順で塗るのは避けた方が無難です。
取り扱いの注意点
- 希釈は専用うすめ液推奨:水でも可だが、塗膜が弱くなることがある。筆塗りなら、希釈せずビンから出してそのままの濃度で塗ってOKです。
- 塗り重ねはしっかり乾かしてから:短時間で重ねると下地を引っ張る場合あり(だいたい10分ぐらいで塗膜を指で触れるようになります。ただし、「下地が泣く(上から塗ったときに下地が溶け出す)」現象を起こしたくない場合は一晩おいた方がいいです。
- 筆の洗浄は素早く:乾燥すると落ちにくいため、使ったらすぐ洗うのを推奨です。
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スタートに必要な道具と費用感
アイテム | 目安価格 |
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水性ホビーカラー(初期10色として) | 1色あたり180円前後 |
筆(細・中・太) | ¥600 |
パレット(使い捨て可) | ¥100 |
うすめ液(小瓶) | ¥250 |
持ち手・塗装台など | ¥1,000〜¥1,500 |
合計 | 約 ¥3,500〜¥4,800 |
ちなみに、筆者は「タミヤモデリングブラシ 平筆No.01 ITEM87028」を愛用しています。
これは、平筆ですが適度な細さ、毛先がまとまっていて乱れがない、安くてどこでも調達可能 と性能が良い割に安価なので重宝しています。
平筆の接地面は直線になるので、マスキングテープを使わずともある程度塗り分けも可能で、しかし、平筆なので大きな面積を塗る場合にも対応してくれるのでこれ一本あれば大抵のことに対応ができるのです。
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※100均活用や代用品を使えば、もっと安く始めることも可能です。
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実際に水性ホビーカラーで仕上げた作例紹介
以下はすべて、水性ホビーカラーを筆塗りで使って仕上げた実作例です:
- WAVE 1/35 スコープドッグ ターボカスタム
- MODEROID オーガス
- スーパーミニプラ ザブングル
- Gフレーム ギャン
- SHODO-X 仮面ライダーV3
- 1/100 ザウエル
- スーパーミニプラ ゼルベリオス
いずれも、筆塗りの発色や仕上がりの参考になるので、ぜひご覧ください。
まとめ
水性ホビーカラーは、筆塗り初心者にも扱いやすく、においの少なさや安全性といった使い勝手の良さが際立つ塗料です。特に室内作業や家族の目が気になる環境でも気兼ねなく使えるのが大きな魅力。
ラッカー塗料との違いを理解し、取り扱いのポイントさえ押さえれば、誰でも美しい仕上がりを実現できます。筆塗りを始めたい人、コロナ禍でのステイホームを経て久しぶりにプラモデル作りを再開したい人は、まず水性ホビーカラーからスタートしてみてはいかがでしょうか?